無店舗型性風俗特殊営業について(法人の場合・法人成りする場合)
現在、無店舗型の性風俗店は、個人事業主よりも法人で経営されるケースが多い傾向にあります。
本日は無店舗型性風俗特殊営業について法人の場合・個人事業主から法人成りする場合の手続きその他についてご説明いたします。
★法人で経営する理由
1.資金調達と事業規模の拡大
個人事業主と比較して、法人は社会的信用が高く、銀行からの融資が受けやすい傾向にあります。これにより、事業の立ち上げや規模拡大に必要な資金を調達しやすくなります。
2.節税対策
法人は、個人事業主よりも経費として認められる範囲が広く、赤字の繰越期間も長いなど、税務上のメリットが多いです。これにより、より効率的な節税が可能になります。
3.事業継続と社会的信用
個人事業主の場合、経営者自身の問題が直接事業に影響を与えますが、法人であれば経営者が変わっても事業を継続できます。また、法人名義での契約や取引は、個人名義よりもスムーズに進むことが多いです。
4.手続きについて
これらのメリットから、無店舗型の性風俗店を安定的に経営し、事業を拡大していく上で、法人化を選択する事業者が多くなっています。ただし、開業時の手続きは個人事業主よりも複雑になるため、専門家への相談が不可欠です。
★法人が経営する場合
1.定款変更の必要性と目的
- 事業目的の追加 会社が合法的に無店舗型性風俗事業を運営するためには、定款の事業目的欄にその旨を明確に追加する必要があります。
- 社会的な信用性の確保 法人として事業を運営することで、個人事業主よりも社会的な信用を得やすくなります。取引先や金融機関との関係を円滑に進める上で重要です。
2.定款変更の手続き
- 株主総会の特別決議 定款の変更は、株主総会における特別決議が必要です。議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
- 議事録の作成 株主総会での決議内容を明確にするため、議事録を作成します。議事録には、決議された事業目的の内容、決議日、出席した役員や株主の署名または記名押印が必要です。
- 法務局での登記変更 株主総会での決議後、管轄の法務局にて、事業目的の変更登記を行います。この際、株主総会議事録や変更登記申請書などの書類を提出します。
3.定款に記載すべき事業目的の例
具体的な記載内容は、会社の実態に合わせて調整が必要です。以下に一般的な例を挙げます。
- 「性風俗関連特殊営業の経営」
- 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく性風俗関連特殊営業の経営」
- 「性風俗サービス提供事業」
注意点
- 明確な事業内容を記載することで、後の行政手続きや金融機関とのやり取りがスムーズになります。
- あいまいな表現や、性的なニュアンスを直接的に連想させる表現は避けた方が良い場合もあります。法務局や専門家と相談して決定することをお勧めします。
4.その他、法人化にあたって考慮すべき点
- 風営法等の遵守 無店舗型性風俗の運営には、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法) の規制が適用されます。特に、デリバリーヘルスなどの無店舗型営業に関する規定を遵守する必要があります。
- 税務上の注意点 法人として事業を行う場合、個人事業主とは異なる税務上の手続きや申告が必要です。専門の税理士に相談することをお勧めします。
- 銀行口座の開設 事業内容が特殊なため、金融機関によっては法人名義の銀行口座開設が難しい場合があります。複数の金融機関に相談したり、特定の金融機関を検討したりする必要があります。
★個人事業主から株式会社への変更手続き(法人成り)
1.法人設立前の準備
- 事業計画の策定 新しい株式会社の事業内容、資本金、役員構成、今後の事業展開などを具体的に計画します。
- 法人名(商号)の決定 新しい会社の名称を決定します。類似商号がないか、事前に登記所で確認します。
- 印鑑の作成 法人実印、銀行印、角印など、会社で必要となる印鑑を作成します。
- 資本金の準備 会社設立に必要な資本金を準備します。最低資本金の定めはありませんが、事業内容に応じて適切な金額を設定します。
2.会社の設立手続き(定款作成・認証)
- 定款の作成 会社の基本ルールを定めた「定款(ていかん)」を作成します。事業目的、商号、本店所在地、資本金、役員構成などを記載します。
- 公証役場での定款認証 作成した定款は、公証役場で公証人の認証を受けます。これは株式会社の設立に必須の手続きです。
3.法務局での設立登記
- 出資金の払い込み 資本金を代表者個人の銀行口座に払い込み、払込証明書を作成します。
- 登記申請書類の作成 登記申請書、払込証明書、定款、役員の就任承諾書など、設立に必要な書類一式を準備します。
- 法務局での設立登記申請 管轄の法務局に、上記書類を提出して設立登記を申請します。登記申請日が会社の設立日となります。
4.法人設立後の手続き
・税務署への届出
⑴ 法人設立届出書
⑵ 給与支払事務所等の開設届出書
⑶ 青色申告の承認申請書(必要に応じて)
⑷ 棚卸資産の評価方法の届出書、減価償却資産の償却方法の届出書
・都道府県・市区町村への届出
各自治体の窓口に法人設立の届出を行います。
・社会保険・労働保険の手続き
⑴ 健康保険・厚生年金保険 日本年金機構(年金事務所)に新規適用届などを提出します。
⑵ 雇用保険 ハローワークに雇用保険適用事業所設置届などを提出します。
⑶ 労災保険 労働基準監督署に保険関係成立届などを提出します。
・個人事業の廃業手続き
⑴ 税務署への廃業届 「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。
⑵ 都道府県税事務所への廃業届 事業税に関する廃業届を提出します。
特記事項
- 許認可等 既存の許認可(風営法に基づく営業許可など)は、個人事業主のものから法人名義のものに切り替えが必要です。手続きは都道府県公安委員会などで行います。
- 事業用資産の引き継ぎ 個人事業主が所有していた事業用資産(ウェブサイト、顧客リスト、車両など)は、適切な方法で法人へ引き継ぎます。
- 銀行口座 法人名義の銀行口座を新規に開設します。
まとめ
これらの手続きは専門的な知識が必要となるため、行政書士はじめとする専門家と連携して進めることを強くお勧めします。当事務所では司法書士・税理士・社労士・宅建士との連携がワンストップで行えます。
飲食店営業許可・風営法に関する許可/届出・深夜における酒類提供飲食店営業開始届・性風俗関連特殊営業の届出についてご相談のある方は
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