はじめに
2026年に入り、東京23区における民泊(住宅宿泊事業)の規制強化の波が急速に広がっています。
特にインバウンド需要が急増した墨田区や豊島区では、地域住民の生活環境を守るため、条例改正や区議会での議論を経て「実質的な総量規制」や営業日数の制限へと舵を切りました。
さらに、2026年7月には江戸川区でも新条例が施行され、23区の規制網がほぼ完成しつつあります。
今後、民泊事業を展開・継続するためには、各区の最新の上乗せ条例を正しく把握し、適切な経営戦略を立てることが不可欠です。
本記事では、2026年に大きな動きを見せる主要な区の規制内容と、事業者がとるべき今後の対策について分かりやすく解説します。
大きな条例改正がある注目区
豊島区(2026年12月16日 本格施行)
➀ 改正内容
区内全域で営業可能日数を年間120日までに制限(現在は180日)。
➁ 営業期間
春・夏・冬休み等の特定の期間のみに限定される見込みです。
③ 区域制限
区内の約7割(住居専用地域や文教地区)で、新規の民泊開設が禁止されます。
➃ 既存施設
既に運営中の施設も、経過措置期間の後はこの制限の対象となります。
墨田区(2026年4月1日 施行済)
➀ 改正内容
これまでなかった営業日数制限および実質的な「新規抑制(総量規制)」を導入。
➁ 制限
原則として月曜正午から金曜正午までの平日営業が禁止されます(週末のみ営業可)。
③ 例外
事業者や管理者が施設内または同一敷地・隣接地に常駐し、即応できる体制がある場合に限り、平日営業が認められます。
➃ 区議会・行政の動向
墨田区議会での議論や近年の急速な施設急増を受け、事前説明会の義務化や管理体制の厳格審査が導入されました。
事実上、新規の民泊届出が受理されにくい「実質的な総量規制」の状態が続いています。
また、旅館業(簡易宿所等)側にも常駐義務等の強化が行われています。
江戸川区(2026年7月1日 施行済)
➀ 改正内容
これまで上乗せ条例のなかった江戸川区でも独自のルール(江戸川区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例)が施行されました。
➁ 制限内容
住居専用地域・住居地域等における新規開設の制限や、家主管理型における事前の一定期間以上の居住要件などが設けられています。
③ 周辺手続きの厳格化
事前説明会の実施、標識掲示、苦情対応記録の作成・保存などが義務付けられ、運用のハードルが上がっています。
その他23区の主な上乗せ条例
中央区
➀ 制限
区内全域で月曜正午から土曜正午まで営業禁止。
➁ 特徴
23区で最も厳しい「土日のみ営業」というルールが継続されています。
新宿区
➀ 制限
住居専用地域にて、月曜正午から金曜正午まで営業禁止。
➁ 状況
近年、指導・監督が強化されており、ルール違反による営業停止処分も実施されています。
渋谷区
➀ 制限
住居専用地域は月曜正午から金曜正午まで禁止。
➁ 文教地区
年間を通じて営業が禁止されています。
世田谷区
➀ 制限
住居専用地域にて、月曜正午から金曜正午まで営業禁止。
➁ 状況
区の面積の約9割が住居専用地域のため、多くのエリアで平日営業ができません。
中野区・杉並区・目黒区・品川区
➀ 制限
いずれも住居専用地域等において、平日(月曜正午から金曜または土曜正午等)の営業が制限されています。
大田区
➀ 特徴
住宅宿泊事業(民泊新法)の制限に加え、独自の「特区民泊」制度があります。
特区民泊であれば、最低宿泊日数の条件はあるものの、年間180日制限を受けずに通年営業が可能です。
文京区
➀ 制限
住居専用地域および文教地区にて、月曜正午から金曜正午まで営業禁止。
まとめ
1.家主不在型の厳格化と「実質的総量規制」
2026年に入り、家主が同居しない「家主不在型」に対し、より厳しい駆けつけ体制や事前説明会の開催義務など、高い参入障壁が設けられています。
墨田区のように区議会や地域住民の声を背景に、新規届出を抑制する「実質的な総量規制」へシフトする自治体も現れています。
2.商業地域や許認可可能エリアへの集中
住居専用地域での平日営業がほぼ全滅に近い状態となったため、
今後は制限の少ない「商業地域」や「準工業地域」での物件選定、
あるいは規制の緩い自治体へのエリア変更がカギを握ります。
3.旅館業法(簡易宿所等)への転換とハードル
年間の営業日数を180日(または区独自の120日など)以上にしたい事業者が、民泊から「旅館業法」へ許可を切り替える動きが加速しています。
ただし、墨田区のように旅館業側にも常駐スペースの確保や常駐人員の配置を求める条例改正が行われているため、消防・建築基準法とあわせて専門家への早めの相談が重要です。

