はじめに
葛飾区で新たに旅館やホテル、簡易宿所などのビジネスを始めるには、保健所の営業許可が必要です。
特に葛飾区では令和8年4月1日に改正条例が施行され、営業従事者の常駐義務や周辺住民への事前周知など、新しいルールへの対応が必須となりました。
本記事では、開業を検討している事業者様に向けて、申請に必要な書類や手続きの流れ、押さえるべき構造設備基準について、行政書士が分かりやすく解説します。
1.旅館業の許可が必要となる「4つの要件」とは?
会員制の宿泊施設や企業の研修所であっても、以下の4つの項目すべてに該当する場合は、旅館業法に基づく営業許可を受ける必要があります。
➀ 宿泊料を受けていること
名目を問わず、実質的に部屋や寝具の使用料とみなされるものはすべて該当します。
例えば、部屋代だけでなく「休憩料」「寝具のレンタル代・クリーニング代」「光熱費」「室内の清掃費」として徴収する場合も宿泊料と判断されます。
➁ 寝具を使用して施設を利用すること
ベッドや布団などの寝具を提供して宿泊させることが要件です。
なお、寝具を宿泊者自身が持ち込んで利用する場合であっても、この要件に該当します。
➂ 施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあること
施設の管理や経営の形態を総合的に見て、宿泊者が利用する部屋を含めた施設全体の衛生面を維持・管理する責任が、社会通念上、営業者側にあると認められる状態を指します。
➃ 宿泊者が生活の本拠を有さないこと
宿泊者がその部屋を「自宅(生活の拠点)」とせず、一時的な滞在として利用する営業形態であることを原則とします。
2.「旅館・ホテル営業」と「簡易宿所営業」の違い
葛飾区で申請する際、営業の形態によって以下の種類に分かれます。それぞれの特徴と違いは以下の通りです。
➀ 旅館・ホテル営業
簡易宿所営業や下宿営業、住宅宿泊事業(民泊)以外の一般的な宿泊施設です。
原則として1つの客室を1組のグループや個人で貸し切る形態を指します。
➁ 簡易宿所営業
客室を多数人で共用(相部屋)する宿泊施設です。
具体的な例としては、カプセルホテルやゲストハウス(ドミトリー)、キャンプ場のバンガローなどがこれに該当します。
【構造設備基準の主な違い(客室床面積)】
➀ 旅館・ホテル営業
寝台(ベッド)を置く客室の場合は1客室あたり9平方メートル以上、寝台を置かない(和室など)の場合は7平方メートル以上の構造部分床面積が必要です。
➁ 簡易宿所営業
1客室あたりの構造部分床面積は3平方メートル以上とされています。
3.事前相談から営業開始まで!手続きの全体スケジュール
許可を取得するまでは営業することができません。以下の流れで計画的に進める必要があります。
➀ 保健所への事前相談
物件の場所や構造設備に問題がないか、事前に図面を持参して保健所の窓口で相談します。
なお、来所の際は事前の予約が必要です。
➁ 関係機関への相談手続き
建築基準法や消防法などの関係法令に適合しているかを確認するため、
葛飾区役所の建築課(延べ床面積1万平方メートルまでの建物の場合)や、
管轄の消防署(本田消防署または金町消防署)などの関係機関にもあらかじめ相談を行います。
➂ 周辺住民への事前周知
申請日の少なくとも15日前から営業許可日までの期間、地域住民が見やすい場所に「旅館業営業計画のお知らせ(計画標識)」を掲示します。
また、施設の敷地から20メートルの範囲にある周辺家屋等の住民に対し、対面による戸別訪問や説明会の開催によって事前の周知を行います。
➃ 申請書類の提出
書類をすべて揃え、正本と副本の計2部を保健所の窓口に提出します。この際、申請手数料として22,000円が必要です。
➄ 施設の検査と関係機関への意見照会
施設が完成した後、保健所の職員が実際に現地へ赴き、構造設備基準に適合しているかどうかの検査を行います。
また、保健所から消防署への適合確認や、周辺の教育機関(学校や公園など)への意見照会が行われます。
この手続きにはおおむね1か月半から2か月程度かかることがあります。
➅ 許可書の交付・営業開始
審査と検査により基準への適合が確認されると、保健所長から営業許可書が交付され、営業を開始できます。
4.令和8年4月改正に適合する構造設備基準のポイント
葛飾区の条例および細則の改正により、特に以下の基準をクリアした設計・設備にする必要があります。
➀ 客室の有効面積と定員
客室の定員は「有効面積3平方メートルにつき1名」として計算します。有効面積とは、宿泊者が睡眠や休憩に使う部分の内のり面積のことで、浴室や便所、壁に造り付けのクローゼットなどは含まれません。また、客室の出入口は内側から施錠でき、外側からは鍵を使って開錠できる構造にする必要があります。
➁ 玄関帳場(フロント)と代替設備
原則として面接に適したフロントを設置しますが、設置しない場合は代替設備として、緊急時に連絡ができる機器の設置や、宿泊者の確認・出入りを常時鮮明に記録できるビデオカメラ(動体検知ではなく常時稼働するもの)の設置などが必要です。
➂ 営業従事者の常駐設備(スタッフ常駐化)
宿泊者の滞在期間中は、24時間体制で営業従事者が常駐する必要があります(宿泊客が外出している間も含む)。
そのため、施設内(または同一の建築物・敷地内)に明確に区画された居室としての「常駐設備(スタッフルーム)」を設ける必要があります。
この設備は、従事者1人あたり床面積4.8平方メートル以上、天井高2.1メートル以上が必要で、さらに宿泊者とは別に「営業従事者専用の便所(手洗いは流水式)」を近接して設ける必要があります。
➃ 共同便所と洗面設備の基準
客室に便所や洗面所がない場合は、共同の設備を設けます。
共同便所は原則として男女別に分け、下水道に接続した水洗式とし、手洗いは連続して水が出る流水式(ロータンク不可)でなければなりません。
設置数は宿泊定員に応じて細則で定められています。
5.営業開始後の運営ルールと「3年間」の記録保存義務
営業が始まった後も、以下の適正な維持管理と記録の保管が義務付けられています。
➀ 旅館業施設の標識の掲示
営業開始までに、区から発行された許可済みの標識を公衆の見やすい場所に掲示します。
➁ 名簿の備え付け
氏名や住所、連絡先などを記載する「宿泊者名簿」に加え、営業従事者全員の氏名や職種、就業年月日を記載した「営業従事者名簿」を施設または事務所に備え付ける必要があります。
➂ 宿泊者への多言語説明
周辺環境へ悪影響を与えないよう、騒音の防止(夜間の大声や洗濯機の使用を控えることなど)や、ごみの分別・排出ルールについて、宿泊者の国籍に応じた多言語の書面などを用いて適切に説明しなければなりません。
➃ 定期的な巡回と苦情対応体制
営業従事者に施設と周辺を1日1回以上定期的に巡回させ、確認点検表に記録する必要があります。
また、周辺住民からの苦情や問い合わせに速やかに対応できる体制を整え、その内容を記録します。
➄ 書類の3年間保存義務
「宿泊者名簿」「営業従事者名簿」「苦情等の対応記録」「巡回時における確認点検表」は、すべて作成した日から3年間保存することが義務付けられています。
まとめ
葛飾区の旅館業許可は、建築基準法や消防法だけでなく、区独自の厳しい構造設備基準や周辺住民への丁寧な説明手続きをクリアしなければなりません。
特に新しく追加された常駐設備の基準などは、物件の設計段階から計画的に進める必要があります。
手続きに不安がある場合や、スムーズに開業を迎えたい事業主様は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。
確実な営業許可取得に向けて全力でサポートいたします。
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