はじめに
個人事業主として風俗営業を行っている店舗が「法人化(法人成り)して規模を拡大したい」
「後継者や他社へ店舗を事業譲渡したい」と考えるケースは非常に多くあります。
しかし、飲食店の営業許可や風営法許可はそのまま自動で引き継がれるわけではありません。
万が一手続きの順序を誤ると、長期間店舗を休業せざるを得なくなる危険があります。
今回は、具体的な事例を交えながら承継手続きの要点を解説します。
1.個人事業主の「法人成り」や事業譲渡に伴う承継手続き
うっかり無許可営業を防ぐ事前手続き
➀ 営業許可の相続・合併・分割・事業譲渡における承認申請の流れ
事業承継制度を利用する場合、効力発生日の前に管轄の警察署へ
「営業承継承認申請書」を提出し、公安委員会の承認を受けます。
・個人事業主Aさんが新会社「株式会社B」を設立して事業を引き継ぐ場合、
譲受人となる株式会社Bの役員全員の住民票や身分証明書、定款、誓約書などを揃えて提出します。
・事業譲渡契約書の内容(店舗設備や営業権が適法に譲渡される旨の記載)を
警察署の生活安全課と事前にすり合わせます。
・公安委員会の事前承認が下りた当日に効力が発生することで、
営業を1日も休止することなく許可名義の切り替えが完了します。
➁ 申請タイミングを誤ると新規取り直しになるリスクと事前対策 最大の落とし穴は、
契約や会社設立を先に行い「事後報告」になってしまうケースです。
・具体例として、4月1日に株式会社Bを設立して営業を開始し、
4月中旬に警察署へ名義変更を相談に行った場合、事前承認申請は一切受け付けられません。
・この場合、個人Aさんの許可は効力を失い、株式会社Bは無許可営業状態となります。
新規許可申請を行うと標準処理期間(約55日)の間は営業ができず、
家賃や人件費などの固定費だけが発生して数百万円規模の損失に繋がります。
・対策として、法人設立日や事業譲渡日の少なくとも2カ月から3カ月前には行政書士や警察署へ事前相談を行い、綿密なスケジュールを確定させることが不可欠です。
2.承継手続きを進める際の実務チェックポイント
見落としがちな役員要件と店舗設備の確認
➀ 法人役員全員の欠格事由の事前調査 新設法人の役員(監査役を含む)に風営法上の欠格事由
(過去の違反歴や暴力団関係者など)に該当する人物が1人でもいると、承認は下りません。
➁ 店舗レイアウトの無断変更の有無 当初の申請図面からカウンターの高さや仕切りの位置などを
無断で変更している場合、承継手続きの前に図面の是正や変更届出が必要となります。
おわりに
法人成りや事業譲渡における風営法の承継手続きは、
1日のスケジュールのズレや書類の不備が取り返しのつかない休業損害を引き起こします。
「会社を作ってから届出を出せばよい」という認識は非常に危険です。
事業の拡大や円滑な店舗引き継ぎを確実に成功させるためにも、計画が持ち上がった初期の段階で、ぜひ専門の行政書士へご相談ください。

