はじめに
親が施設に入り実家が空き家になっても、親の認知症が進むと売却や管理が法的に困難になります。いわゆる不動産の凍結状態を防ぎ、家族の判断で大切な資産を守るための家族信託の仕組みと、その具体的なメリットを詳しく解説します。
1.空き家問題と認知症のリスク
親が認知症になり判断能力が不十分とみなされると、不動産売買などの法律行為ができなくなります。
➀ 資産の凍結
親名義の家を子が勝手に売却したり、リフォームしたりすることはできません。
➁ 維持費の負担
住んでいない実家の固定資産税や管理費だけが、親の口座から(あるいは子が立て替えて)引き落とされ続けることになります。
③ 特別措置法の法的リスク
放置された空き家が「特定空家」に指定されると、固定資産税の優遇措置が解除され、税負担が最大6倍になる恐れもあります。
2.家族信託で管理権限を子に託すメリット
家族信託は、親(委託者)が子(受託者)に不動産の管理・処分権限を託す契約です。
➀ 認知症発症後も売却が可能
契約時に権限を移しておけば、親の判断能力が低下した後でも、子の判断で適切なタイミングで実家を売却できます。
➁ 売却代金を親の介護費用に
売却して得たお金は「信託財産」として子が管理し、親の入院費や施設入居費にダイレクトに充てることが可能です。
③ 柔軟な資産運用
売却だけでなく、リフォームして賃貸に出すといった活用も子の裁量でスムーズに行えます。
3.成年後見制度との違いと柔軟性の比較
認知症対策として比較される成年後見制度ですが、家族信託とは目的が大きく異なります。
比較項目 |
家族信託 |
成年後見制度 |
主な目的 |
積極的な財産管理・承継 |
本人の財産保護(減らさない) |
不動産売却 |
子の判断で比較的自由に可能 |
居住用物件の売却には家庭裁判所の許可が必要 |
費用の継続性 |
契約時の初期費用のみが基本 |
専門家が後見人の場合、月額報酬が一生続く |
柔軟性 |
家族の意向を反映しやすい |
裁判所の監督下にあるため制約が多い |
4. 具体的な手続きの流れと行政書士の役割
家族信託を安全にスタートさせるには、法的に不備のない準備が必要です。
➀ コンサルティングと設計
家族会議を開き、誰がどの財産を管理するか、最終的に誰に引き継ぐかを決めます。
➁ 信託契約書の作成
将来のトラブルを防ぐため、公証役場にて公正証書で作成するのが一般的です。
③ 信託登記
法務局にて、不動産の名義を「受託者(子)」に変更する登記を行います。
④ 信託口口座の開設
信託財産を管理するための専用口座を銀行で開設します。
⑤ 行政書士の役割
行政書士は、ご家族の間に入って意向をヒアリングし、最適な契約スキームを設計する「伴走者」です。
公正証書作成に向けた公証役場との調整や、必要書類の収集、さらにはその後の運用のアドバイスまで、実務面を一貫してサポートいたします。
おわりに
空き家対策は、親が元気なうちに家族で話し合うことが不可欠です。
家族信託を活用すれば、将来の不安を安心に変えることができます。
当事務所では個別の状況に合わせた設計をサポートしますので、お気軽にご相談ください。

